ななつのこ/加納朋子/(ASIN:4488426018)

7つの連作短編による日常ミステリー小説です。
 
主人公の入江駒子は、書店の新刊本コーナーで見つけた『ななつのこ』という短編集に惹かれ、衝動買いをしてしまう。
そして、この小説を読み終えたあと、『ななつのこ』の作者・佐伯綾乃にファンレターを書きたいという衝動に駆られるのである。
駒子は、最近、身辺で起こった不思議な出来事を添えてそのファンレターを送るのだが、数日後に作者本人から返信が。
なんと、そこには想像という名の“解決編”が添えられていた!
駒子と綾乃の不思議な文通はこうして始まっていくのである…
 
とりあえずミステリーと言えば、殺人事件が起きたりして、犯人・動機を推理するってのが思い浮かびますが、この小説では誰も殺されませんし、罪を犯す人も出てきません。
そもそも、この小説はミステリー小説ではないのかも。
7つの短編それぞれに作中作品『ななつのこ』のストーリーが出てくるのだけれど、そこでの主人公「はやてくん」と「あやめさん」が素敵な人物で、ほのぼのとします。
もちろん、駒子も楽しい性格で、その日常は愉快なものです。綾乃さんも安楽椅子探偵のごとく、やさしく丁寧に駒子の日常の謎に対して回答しています。
 
この小説に出てくる人たちは、皆「こころ」がやさしい。
そして小説自体、日常が描かれているのに幻想的、現実的なのにどこかやさしい、という感じです。
読んで癒される、そんな小説です。
 
もし、ミステリーは苦手とか思ってる人がいたとしても、この作品はとても読みやすいと思われます。
やさしい物語に触れたい方にお勧めしたい1冊です。
 
最後に、私のこころに残ってる文章を2つほど引用します。

いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか? いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになってしまったのでしょうか?
いつだってどこでだって謎はすぐ近くにあったのです。

「私、思うんですけど」ようやく言葉を続けた。「星を見るってことは、本を読むことと、とてもよく似ていませんか?」
 もしかしたら笑われるかな、と思った。私のこうした飛躍は、よく人に笑われる。けれど彼は笑うどころか、大真面目に頷いてくれた。
「そうだね、同じような危険を孕んでいるという点でも、よく似ているかもしれない」

今度、機会があったら、同じ加納朋子さんの「いちばん初めにあった海」をレビューしたいなー…